海外開発会社に外注すべき?国内との比較と判断基準
- atsu wada
- 2025年11月11日
- 読了時間: 10分

「システム開発を外注したいけれど、海外は安いと聞く。実際どうなの?」「国内より海外の方がコストを抑えられるなら検討したいが、不安もある」。システム開発の外注を検討する際、こうした疑問を持つ担当者は少なくありません。
確かに、10年ほど前までは「海外外注=大幅なコスト削減」というイメージがありました。しかし、2025年現在の状況は大きく変わっています。単純に「安いから海外」という判断では、期待した結果が得られないどころか、かえって失敗するリスクが高まっています。
本記事では、海外開発外注の最新事情と、国内外注との違い、そして「自社はどちらを選ぶべきか」の判断基準を、初めて検討する方にも分かりやすく解説します。
「海外は安い」はもう古い:今の現実

10年前の海外外注といえば、「人件費が国内の3分の1」といった大幅なコスト削減が最大の魅力でした。多くの企業が「とにかく安く作りたい」という理由で海外への外注を選んでいました。
しかし、2025年現在の状況は全く異なります。海外の経済成長に伴って人件費が上昇し、かつてほどの劇的なコスト差はなくなってきています。さらに、プロジェクト管理や通訳の費用など、表面的な開発費用以外のコストも考慮すると、国内外注と大きな差がないケースも増えています。
目的が「コスト削減」から「リソース確保」へ

では、なぜ今でも多くの企業が海外外注を活用しているのでしょうか。理由は「コスト削減」から「リソース確保」へと変化しています。
日本国内では深刻なIT人材不足が続いており、「採用したくても応募がない」「予算があっても人が集まらない」という状況が珍しくありません。経済産業省の調査によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると試算されています。
つまり、海外外注を選ぶ本当の理由は「安いから」ではなく、「国内で必要な人材を確保できないから」というのが現実なのです。
海外外注でよくある失敗例

海外外注を選んで失敗する企業には、共通するパターンがあります。まずは、どんな選び方が危険なのかを具体的に見てみましょう。
失敗事例①:「安さ」だけで選んだ製造業の教訓
ある製造業では、国内の見積もりに対し海外見積もりが大幅に安かったため、即決で海外の開発会社に発注しました。しかし、仕様書が不十分だったため、何度も認識のズレが発生。ブリッジSEとの追加打ち合わせ、仕様書の作り直し、手戻り修正などで追加費用が膨らみ、納期も大幅に遅延しました。
「最初から国内に依頼していれば、こんなに時間もコストもかからなかった」というのが担当者の正直な感想でした。表面的な安さに飛びついた結果、かえって高くついてしまったのです。まず業務フローを聞き、課題を理解しようとする姿勢があるかどうかが、良いパートナーかどうかの分かれ目です。
失敗事例②:仕様書なしで発注したサービス業
あるサービス業では、「見積もりが安い」という理由で海外に発注したものの、詳細な仕様書を用意していませんでした。国内開発と同じように「こんな感じで」という曖昧な指示で進めた結果、完成したシステムは期待と全く異なるものに。
結局、一から作り直すことになり、時間もコストも二倍以上かかってしまいました。海外外注では、国内のような「察する」コミュニケーションが通じないことを痛感したそうです。
国内と海外:決定的な3つの違い

国内外注と海外外注では、何が根本的に異なるのでしょうか。費用面以上に重要な違いを理解しておきましょう。
違い1:コミュニケーションと仕様書の必要性
国内開発では、「こんな感じで」「いい感じに」といった曖昧な指示でも、開発者が意図を汲み取って形にしてくれることがあります。これは日本特有の「察する文化」があるからです。
海外開発では、このような曖昧なコミュニケーションは通じません。仕様書に書かれていることが全てであり、書かれていないことは「やらなくて良いこと」と解釈されます。これはどちらが優劣というわけではなく、コミュニケーション文化の違いです。
そのため、海外外注では最初の段階で詳細な仕様書を作り込む必要があります。画面のレイアウト、操作の流れ、データの扱い方、エラー時の動作など、できるだけ具体的に文書化しておかなければなりません。手間はかかりますが、その過程で要件が整理され、後の手戻りを防ぐという副次的な効果も生まれます。
違い2:ブリッジSEという重要な存在
文化の違いを埋めるために重要な役割を果たすのが「ブリッジSE」です。
ブリッジSEとは、日本語と現地の言語の両方ができ、技術的な知識も持つ人材のことです。単なる通訳ではなく、日本側の要望を技術的に正確に伝え、逆に現地エンジニアの状況や課題を日本側に分かりやすく報告する、橋渡し役です。
ブリッジSEの配置パターンは主に3つあります。
現地にいる海外スタッフ(日本語ができる現地人材)がブリッジを務める
日本法人を持つ海外開発会社の日本人スタッフがブリッジを務める
発注側の日本企業の担当者がブリッジを務める
近年では、海外に本社を持つ開発会社でも日本法人を設立し、日本人スタッフがブリッジSEやPMとして対応するケースが増えています。この場合、日本の商習慣を理解した日本人がコミュニケーションを担当するため、純粋な海外外注よりもスムーズに進むことが多いのが特徴です。
海外外注の成否は、このブリッジSEの力量に大きく左右されます。優秀なブリッジSEがいれば、コミュニケーションは驚くほどスムーズに進みます。逆に、能力が不足していると、指示が正確に伝わらず、期待と違うシステムができあがってしまいます。
なお、ブリッジSEの費用は通常のエンジニアよりも高くなる傾向があります。特に日本法人の日本人ブリッジSEの場合、日本国内の人件費水準に近くなります。しかし、ここをケチると確実にプロジェクトは失敗するため、必要なコストと考えるべきです。
違い3:実際のコスト差は限定的
表面的な開発費用だけを見ると、海外の方が安く見えるかもしれません。しかし実際には、さまざまな「見えないコスト」が追加で発生します。
海外外注で発生する隠れコスト
ブリッジSEの費用(通常のエンジニアより高額)
詳細な仕様書作成のための社内工数
頻繁な進捗確認のための打ち合わせ時間
時差を考慮したスケジュール調整や緊急時の対応
認識のズレによる修正作業
コミュニケーションロスによる手戻り
品質管理のための追加テスト
これらを全て含めて計算すると、国内外注との差は思ったほど大きくありません。「大幅なコスト削減」を期待して海外を選ぶと、期待外れに終わる可能性が高いのです。
国内 vs 海外:どう違うのか
ここまで説明してきた国内外注と海外外注の違いを、主要な項目で整理しました。どちらが優れているというわけではなく、自社のプロジェクトや状況に合わせて選ぶことが重要です。
比較項目 | 国内開発 | 海外開発 |
コミュニケーション | 曖昧な指示でも通じやすい | 詳細な仕様書が必須 |
開発コスト | 人件費は高め | 開発費自体は安いが管理コスト増 |
納期調整 | 柔軟に対応可能 | スケジュール変更が難しい |
業務理解 | 日本の商習慣を理解している | 説明と文書化に時間が必要 |
リソース確保 | 人材不足で採用困難 | 比較的確保しやすい |
緊急対応 | 同じ時間帯で素早く対応 | 時差があり即座の対応困難 |
海外外注が向いているケース・向いていないケース

では、どんな場合に海外外注を選ぶべきで、どんな場合は避けるべきでしょうか。
海外外注が向いているケース
以下のようなケースは海外外注が向いているといえるでしょう。
国内でエンジニアが確保できない
募集をかけても応募がない、予算があっても人材が見つからないという状況であれば、海外でのリソース確保は現実的な選択肢となります。
詳細な仕様書を作成できる体制がある
社内に要件を整理し、詳細な仕様書を作れる人材や体制がある場合は、海外外注でもスムーズに進めることができます。逆に、この準備ができない状態で海外に発注すると、高確率で失敗します。
長期的な関係を築く覚悟がある
継続的にシステム開発やメンテナンスを任せる予定があるなら、海外に専属チームを持つことは有効です。回を重ねるごとに相互理解が深まり、効率が上がっていきます。
技術的には高度だが業務ロジックが明確である
AI開発や特定の技術領域で高度なスキルが必要だが、何を作るかは明確に定義できているケース。技術力は必要だが、日本特有の商習慣への深い理解は不要という場合に適しています。
海外外注が向いていないケース
以下のようなケースは海外外注に向いていないと言えます。
とりあえず安くしたい
コスト削減だけを目的に海外を選ぶと、管理コストや追加費用で結局高くつくことが多々あります。表面的な安さに惹かれて選ぶのは危険です。
仕様が曖昧で試行錯誤したい
「作りながら考えたい」「実際に動かしてみて方向性を決めたい」というアプローチが必要な場合、海外外注は不向きです。頻繁なコミュニケーションと柔軟な対応が必要なプロジェクトは、国内の方がスムーズです。
長期的な関係を築く覚悟がある
継続的にシステム開発やメンテナンスを任せる予定があるなら、海外に専属チームを持つことは有効です。回を重ねるごとに相互理解が深まり、効率が上がっていきます。
日本特有の商習慣や業務フローが複雑である
小売業の在庫管理、建設業の工程管理、医療機関の診療報酬計算など、日本独自のルールや慣習が深く関わるシステムは、業務理解に時間がかかりすぎます。こうした場合は国内の、できれば同業界での経験がある開発会社を選ぶべきです。
初めての外注で管理ノウハウがない
社内に開発プロジェクトを管理した経験のある人材がいない場合、いきなり海外外注は難易度が高すぎます。まずは国内での外注経験を積んでから、海外を検討する方が現実的です。
主要な海外開発拠点の特徴

海外外注といっても、国によって特徴が大きく異なります。それぞれの得意分野やリスクも理解した上で、主要な選択肢を比較してみましょう。
国 | 特徴 | 向いている企業 |
ベトナム | 親日的、日本語人材が多い、バランス型 | 初めての海外外注 |
中国 | 高い技術力、先端技術に強い、人件費上昇傾向 | 技術力重視、リスク許容できる |
インド | 非常に高い技術力、英語ベース | 高度な技術が必要、英語OK |
フィリピン | 英語力が強み、欧米企業との取引多い | 英語でのコミュニケーション前提 |
初めて海外外注を検討するなら、日本語対応できる人材が多く、実績も豊富なベトナムが最も無難な選択肢と言えます。
あなたの会社はどっち?判断チェックリスト

自社が海外外注に向いているかどうかを判断するためのチェックリストです。
□ 国内で必要なエンジニアを採用できない状況である □ 社内に詳細な仕様書を作成できる人材がいる □ プロジェクト管理の経験者が社内にいる □ ブリッジSEの管理・評価ができる体制を作れる □ 長期的な関係を築く覚悟と予算がある □ 定期的な進捗確認に時間を割ける □ 曖昧なコミュニケーションに頼らず文書化できる □ 時差や文化の違いを許容できる |
判定基準:
6項目以上:海外外注を積極的に検討する価値あり
3〜5項目:慎重に検討し、小規模から試す
2項目以下:まずは国内での外注を優先すべき
いきなり大きなプロジェクトを海外に発注するのはリスクが高すぎます。まずは小規模な機能開発やプロトタイプ制作など、リスクの低いプロジェクトから始めることをお勧めします。
実際にやってみることで、ブリッジSEとのコミュニケーション、仕様書の作り方、進捗管理の方法など、多くのことを学ぶことができます。小さな失敗から学び、徐々に規模を大きくしていく。これが海外外注を成功させる現実的な道筋です。
まとめ:「安いから」ではなく「必要だから」選ぶ

海外開発外注の判断で最も重要なのは、以下の3点です。
目的を明確にする
コスト削減ではなく、リソース確保が本当の理由かどうか。「安いから」という理由だけで選ぶと、隠れたコストで結局高くつきます。
準備ができているか確認する
詳細な仕様書を作れる体制と、プロジェクト管理の経験があるか。これらがない状態での海外外注は、高確率で失敗します。
小さく始める
いきなり大型案件ではなく、まずは小規模で相性を確認する。成功体験を積み重ねながら、徐々に規模を拡大していくのが賢明です。
初めての外注なら、まず国内で経験を積むのが王道です。どうしても国内でリソースが確保できない場合に限り、この記事のチェックリストを使って海外外注を慎重に検討してください。
システム開発の外注は、国内・海外を問わず、適切なパートナー選びと準備が成功の鍵となります。まずは自社の状況を整理し、この記事で示した判断基準をもとに、最適な一手を選び取りましょう。


