【発注者向け】見積もり取得時の注意点と正しい比較方法
- atsu wada
- 2025年11月28日
- 読了時間: 7分

「3社から見積もりを取ったけれど、金額がバラバラで何を基準に選べばいいか分からない」「安い見積もりは魅力的だが、後で追加費用が発生しないか不安」。システム開発の外注で見積もりを取った担当者から、こうした相談をよく受けます。
見積もりは「金額」ではなく「条件」を比較するものです。何が含まれていて、何が含まれていないのか。どんな前提条件があるのか。これらを正しく理解しないまま発注すると、後で大きなトラブルにつながります。
日経コンピュータ「ITプロジェクト実態調査2018」によると、コスト超過が発生したプロジェクトの原因として「追加の開発作業が発生した」が64.4%、「見積もりが甘かった」が37.3%を占めています。つまり、見積もり段階での認識不足や前提条件の曖昧さが、コスト超過の大きな要因となっているのです。
本記事では、初めて外注を担当する方でも安心して見積もりを比較できるよう、具体的なポイントをお伝えします。
見積もりの項目解説:後で追加費用が発生しないために

見積もり書を受け取ったとき、まず確認すべきは「項目の内訳」です。良い見積もりと悪い見積もりの違いは、この項目の明確さで決まります。
良い見積もりに含まれる項目
優良な開発会社の見積もりには、工程ごとの詳細な内訳が記載されています。要件定義から基本設計、詳細設計、プログラミング、テストまで、それぞれの工程で何人日かかるのか、いくらなのかが明記されています。
さらに、各工程で何を納品するのかも明示されています。要件定義書、設計書、テスト仕様書といった成果物の内容や、打ち合わせの回数も具体的に書かれています。
前提条件も重要です。対応するブラウザや端末、想定するユーザー数や処理量、データ移行の有無と範囲などが明記されていれば、後で「そこまでは想定していなかった」というトラブルを避けられます。
そして最も重要なのが「除外事項」です。今回の範囲に含まれないものや、別途費用が発生する条件が明記されていれば、追加費用の発生を予測できます。
危険な見積もりの特徴
以下に1つでも当てはまる場合は、危険な見積もりです。
□ 「システム開発一式 ○○万円」だけの記載 □ 工程ごとの内訳がない □ 除外事項の記載がない □ 追加費用の条件が不明確 |
こうした見積もりは、後で「この機能は含まれていない」「追加費用が必要」と言われるリスクが高く、トラブルの原因になります。
見積もり比較のコツ:金額だけで選ばない

複数の見積もりを比較する際、最も重要なのは「同じ条件で比較できているか」を確認することです。
以下の比較の3ステップで確認しましょう。
ステップ1:前提条件を揃える
A社の見積もりには「サーバー構築」が含まれているのに、B社には含まれていないということがよくあります。まずは、各社の見積もりに何が含まれているかを一覧表にして整理しましょう。
項目 | A社 | B社 | C社 |
要件定義 | 含む | 含む | 含まない |
サーバー構築 | 含む | 含まない | 含まない |
データ移行 | 含まない | 含む | 含む |
このように整理すると、「A社は高いが、実はサーバー構築も含まれている」といった違いが見えてきます。
ステップ2:工数の妥当性を確認する
工程ごとの人日を比較しましょう。例えば、同じ要件定義でもA社は「10人日」、B社は「5人日」となっている場合、なぜ倍の差があるのかを確認する必要があります。B社が経験豊富で効率的なのか、それとも工数を少なく見積もっているだけなのか。この違いは、プロジェクトの品質に大きく影響します。
ステップ3:総額ではなく「含まれる範囲」で判断する
最終的には、金額だけでなく「どこまでやってくれるのか」で判断しましょう。安さだけで判断すると、後で追加費用が発生して結果的に高くつきます。
比較表の作り方
実際に比較する際は、以下のような表を作ると分かりやすくなります。
比較項目 | A社 | B社 | C社 |
総額 | 500万円 | 350万円 | 450万円 |
要件定義 | 含む | 含む | 含まない |
サーバー構築 | 含む | 別途 | 別途 |
データ移行 | 別途 | 含む | 含む |
保守サポート(1年) | 含む | 別途 | 含む |
追加費用の条件 | 明記あり | 不明確 | 明記あり |
この表を見ると、B社は一見安いですが、サーバー構築が別途で、追加費用の条件も不明確であることが分かります。
不明点の聞き方:遠慮せず確認することが重要

見積もりを受け取ったら、不明な点は必ず確認しましょう。遠慮せず確認することが重要です。むしろ、契約前に確認しておくことが双方にとって重要です。
必ず確認すべき5つのポイント
見積もりで確認すべきポイントは、以下の5つです。
1. 除外事項
「この見積もりに含まれないものは何ですか?」と直接聞きましょう。口頭だけでなく、文書で回答してもらうことが重要です。
2. 追加費用が発生する条件
「どんな場合に追加費用が発生しますか?」「追加費用はどうやって計算されますか?」を明確にしましょう。人日単価が分かれば、おおよその追加費用も予測できます。
3. 仕様変更時の対応
「途中で仕様を変更したい場合、どう対応してもらえますか?」「変更にかかる期間と費用の目安は?」を確認しましょう。
4. 納期の根拠
「この納期はどのように算出されましたか?」「遅延リスクはありますか?」を聞くことで、スケジュールの妥当性を判断できます。
5. 保守・運用の費用
開発費用だけでなく、稼働後の保守費用も重要です。「稼働後のサポートはどこまで含まれますか?」「年間の保守費用はいくらですか?」を確認しましょう。
効果的な質問の仕方
❌ 悪い質問例:「追加費用は発生しますか?」
⭕ 良い質問例:「画面を1つ追加する場合、どれくらいの費用と期間がかかりますか?」
❌ 悪い質問例:「サポートはありますか?」
⭕ 良い質問例:「稼働後に不具合が見つかった場合、どこまで無償対応してもらえますか?対応の期限はありますか?」
費用対効果の考え方:安さだけが正解ではない

見積もりを比較する際、「安ければ安いほど良い」と考えがちですが、それは危険です。重要なのは、投資に対してどれだけの効果が得られるかという「費用対効果」です。
総所有コスト(TCO)で考える
システム開発の費用は、開発費用だけではありません。
TCOの内訳(初期費用 / 運用費用 / 隠れコスト)
初期費用として開発費用、サーバー構築費用、データ移行費用がかかります。さらに、運用費用として年間の保守費用、サーバー費用、ライセンス費用も必要です。そして、社内スタッフの対応工数や不具合対応の追加費用、機能追加の費用といった隠れたコストも発生します。
例えば、A社の開発費用が500万円、年間保守費用が50万円で、B社の開発費用が350万円、年間保守費用が100万円だとします。
A社:初年度550万円、5年間で750万円
B社:初年度450万円、5年間で850万円
5年間で見ると、初期費用が安いB社の方が総額では高くなります。このように、長期的な視点で費用を比較することで、投資回収期間が明確になります。
効果の見積もり方
費用だけでなく、期待できる効果も数値化しましょう。例えば、月末の集計作業が3日から半日に短縮されれば、年間30日の削減になります。担当者の時給を3,000円とすると、年間72万円の人件費削減につながります。
在庫管理の精度向上で欠品が減少すれば、機会損失を削減できます。リアルタイム分析で売れ筋商品の発注精度が向上すれば、売上5%増も見込めるでしょう。これらの効果と投資額を比較すれば、何年で回収できるかが見えてきます。
まとめ:見積もり比較は投資判断

システム開発の見積もり比較は、単なる「安い業者探し」ではなく、「投資判断」です。見積もりは「金額」ではなく「条件」の比較です。重要なのは、以下の3点を押さえることです。
1. 見積もりの中身を正しく理解する
何が含まれていて、何が含まれていないのか。前提条件や除外事項を確認しましょう。
2. 同じ条件で比較する
金額だけでなく、含まれる範囲や工数の妥当性を比較しましょう。
3. 総所有コストと効果で判断する
初期費用だけでなく、運用費用も含めた長期的なコストと、期待できる効果を数値化して判断しましょう。
次のステップ
見積もりを正しく比較するために、以下のチェックリストを活用してください。
□ 各社の見積もりに何が含まれているかを一覧表にした □ 除外事項と追加費用の条件を文書で確認した □ 工程ごとの工数(人日)を比較した □ 初期費用だけでなく、5年間の総所有コストを計算した □ 期待できる効果を数値化して、投資回収期間を算出した |
見積もり比較を正しく行うことで、プロジェクトの成功確率は大きく高まります。この記事で紹介したポイントを参考に、自社にとって最適な開発会社を選んでください。


