開発スピードを上げるために担当者ができる準備とは?
- atsu wada
- 1月23日
- 読了時間: 7分

「開発会社に依頼したのに、なかなかプロジェクトが進まない」「見積もりの段階で時間がかかりすぎている」「納期が遅れそうだと言われた」。システム開発の外注を担当していると、こうした悩みに直面することがあります。
実は、開発スピードが遅い原因の多くは、開発会社ではなく発注側にあります。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の最新調査「企業IT動向調査2025」によると、500人月以上のプロジェクトの48.0%が納期を達成できていません。その主な原因は「要件定義の遅れ」「発注側の意思決定の遅さ」「必要な情報提供の遅れ」です。
つまり、開発会社がどれだけ優秀でも、発注側の準備が不十分であれば、プロジェクトは遅延してしまうのです。本記事では、開発スピードを上げるために担当者ができる具体的な準備をお伝えします。
なぜ「社内準備」が開発スピードを左右するのか

多くの担当者は、「開発会社に依頼すれば、あとは任せられる」と考えがちです。しかし実際には、発注側の準備不足がプロジェクト遅延の最大の原因となっています。
開発会社が「待つ時間」が積み重なる
開発会社は、発注側からの回答や承認を待っている時間が驚くほど多いものです。「この仕様で問題ないか」「このデザインで進めていいか」。こうした質問への回答が遅れるたびに、開発は止まります。
1つの質問への回答が2日遅れれば、プロジェクト全体で2日遅れます。10個の質問があれば、20日の遅延につながります。この積み重ねが、最終的に「納期に間に合わない」という結果を招くのです。
準備不足がコストも押し上げる
開発会社は、待ち時間が発生しても人件費は発生し続けます。エンジニアが手持ち無沙汰になれば、その時間も請求されるか、他のプロジェクトに回されて自社の優先度が下がります。
最初の段階で準備をしっかり行うことは、納期だけでなくコストの面でも重要なのです。
準備①:要件を固め、意思決定体制を整える

開発をスムーズに進めるには、「何を作るか」を明確にし、「誰が判断するか」を決めておくことが最も重要です。
課題と理想を整理する
まず、「なぜシステムを作るのか」を明確にしましょう。現状でどんな課題があり、システム化によって何を解決したいのか。箇条書きでリストアップします。
例えば、在庫管理システムを作りたい場合:
在庫数が把握できず、欠品や過剰在庫が発生している
複数拠点の在庫を一元管理できていない
月末の棚卸に丸2日かかっている
次に、「システムができたらどうなっていたいか」を具体的に描きましょう。
リアルタイムで全拠点の在庫数が分かる
在庫が一定数を下回ったら自動で発注される
月末の棚卸が半日で終わる
実際にシステムを使う現場スタッフの意見も集めておきましょう。担当者が「便利だと思う機能」と、現場が「本当に必要な機能」は違うことがよくあります。
承認フローと権限を明確にする
プロジェクトが始まる前に、社内の承認フローを確認しておきましょう。
予算の承認は誰が行うのか
仕様変更の判断は誰ができるのか
追加費用が発生した場合、誰の承認が必要か
これらを明確にしておかないと、「上司に確認します」と毎回時間がかかり、プロジェクトが止まります。
ここでの実践的なテクニックは、「定例会議の場を活用すること」です。メールで回覧すると1週間かかる承認も、定例MTGに決裁権限者を呼んでその場で「OK」と言わせれば1分で終わります。プロジェクトのキックオフMTGには、できるだけ意思決定者(上司や経営層)にも参加してもらいましょう。
担当者の権限を決める
担当者が判断できる範囲を事前に決めておくことも重要です。例えば「予算内での軽微な仕様変更は担当者判断でOK」「追加費用が○○万円以内なら担当者判断でOK」といったルールを決めておけば、いちいち承認を待たずに進められます。
準備②:質問に即答できる体制を作る

開発が始まると、開発会社から毎日のように質問が来ます。この質問への回答スピードが、プロジェクト全体のスピードを左右します。
窓口を一本化する
開発会社からの質問窓口を一本化しましょう。複数の担当者がバラバラに対応すると、回答が矛盾したり、誰が答えるべきか分からなくなります。
担当者が窓口となり、必要に応じて社内の関係者に確認して回答する。このフローを明確にしておくことで、開発会社は誰に聞けばいいか迷いません。
回答期限を明確に伝える
開発会社から質問が来たら、いつまでに回答するかを必ず伝えましょう。「確認して折り返します」だけでは不十分です。「明日の午前中までに回答します」と具体的に伝えることで、開発会社も次の作業計画が立てられます。
もし社内調整に時間がかかりそうなら、「この件は関係部署と調整が必要なので、3営業日いただけますか」と正直に伝えましょう。待たせることが問題なのではなく、いつまで待てばいいか分からないことが問題なのです。
「暫定回答」で開発を止めない
ここで重要なのが、「暫定回答」の活用です。100点の回答を作るのに3日かけるより、「まずはこの方針で進めて。詳細は後で詰める」という60点の回答を即座に出す方が、開発の手を止めずに済みます。
完璧な回答を目指して時間をかけるより、大枠の方向性だけでも早く示すことで、開発会社は次の作業に着手できます。細かい部分は後から調整すればよいのです。
準備③:資料を整理し、現実的なスケジュールを組む

開発会社がスムーズに作業を進められるよう、必要な資料を事前に整理し、余裕のあるスケジュールを組むことが重要です。
業務フローとデータを整理する
今どんな業務をどんな手順で行っているのかを、図や文書にまとめておきましょう。完璧なフローチャートでなくても構いません。箇条書きや手書きのメモでも十分です。
例えば、受注業務なら:
お客様から電話で注文を受ける
Excelの注文台帳に記入する
在庫を確認する
倉庫に出荷指示を出す
現在Excelや紙で管理しているデータがあれば、整理しておきましょう。特に「データ移行」は最大の難関です。Excelの表記ゆれ(半角・全角の混在、スペースの有無、日付形式の違いなど)を直すだけで数週間かかることもあります。開発前にデータを綺麗にしておくだけで、コストも納期も劇的に改善します。
参考資料を用意する
「こんなシステムにしたい」というイメージがあれば、参考となるWebサイトやアプリの画面キャプチャを集めておきましょう。言葉で説明するより、視覚的な参考資料があった方が、認識のズレを防げます。
社内調整の時間を見込む
スケジュールを組む際は、開発会社が作業する時間だけでなく、社内での確認や承認にかかる時間も考慮しましょう。仕様書の確認、上司への報告、関係部署への回覧、承認を得るまでに1週間かかることもあります。この時間をスケジュールに組み込んでおかないと、すぐに遅延します。
繁忙期を避け、バッファを持たせる
自社の繁忙期にプロジェクトを進めるのは避けましょう。繁忙期は担当者も現場も忙しく、開発会社からの質問に答える時間が取れません。できれば閑散期にプロジェクトを進めることで、スムーズに進みます。
また、スケジュールには必ずバッファ(余裕)を持たせましょう。全体スケジュールの10〜20%程度はバッファとして確保しておくことで、多少の遅れが発生しても、最終納期には間に合わせることができます。
まとめ:準備が開発スピードを決める

開発スピードを上げるために、開発会社を急かすのではなく、まず発注側の準備を整えることが重要です。準備が整っていれば、開発会社は迷わず作業を進められ、結果的にプロジェクトは早く完了します。
1. 要件を固め、意思決定体制を整える
課題と理想を整理し、承認フローと権限を明確にしましょう。
2. 質問に即答できる体制を作る
窓口を一本化し、回答期限を守りましょう。暫定回答も活用しましょう。
3. 資料を整理し、現実的なスケジュールを組む
業務フローとデータを整理し、社内調整の時間とバッファを見込みましょう。
次のステップ
開発スピードを上げるために、以下のチェックリストを活用してください。
□ 現状の課題と理想の姿を整理した □ 現場スタッフの意見を集めた □ 社内の承認フローと担当者の権限を明確にした □ 開発会社からの質問窓口を一本化した □ 現行の業務フローを可視化した □ 既存データを整理し、表記ゆれを修正した □ 社内調整の時間を見込んだスケジュールを作成した |
開発スピードは、開発会社の技術力だけで決まるものではありません。発注側の準備が整っていれば、プロジェクトは驚くほどスムーズに進みます。この記事で紹介した準備を実践することで、プロジェクトの成功確率は大きく高まります。


