Vol.03 業務で使うツールのセキュリティリスクと対策
- atsu wada
- 3月25日
- 読了時間: 9分
更新日:4月14日

この記事であなたがやるべきこと
「業務用ツールが抱える代表的なリスク」 を理解する
自分の使っているツールを 「権限設定・アップデート・パスワード管理」 の観点で点検する
チーム全体でセキュアな運用を実践するために 提案・共有できるようになる
はじめに
「業務用ツール」と聞くと、メールソフトやチャットツール、ドキュメント共有サービスなどを思い浮かべる人が多いでしょう。特に新社会人のエンジニアにとっては、これらのツールが日々の作業を効率化してくれる“強力な味方”です。
一方で、ツールの使い方を誤ると、社内の大事な情報が流出したり、マルウェアに感染したりする重大なリスクにつながることがあります。便利さの裏には落とし穴もあるのです。
本記事では、代表的な業務ツールに潜むセキュリティリスクと、その対策方法をわかりやすく解説していきます。「とりあえず便利だから使っている」と思っている方は、ぜひこの機会に自分のツール利用を振り返ってみてください。
なぜ業務で使うツールがセキュリティ上の脅威になるのか?
1. 不特定多数が利用するポピュラーなツールには攻撃者も目をつけやすい
たとえば大企業や官公庁でも使われる ビデオ会議ツール や チャットツール は、世界中で何百万人ものユーザーが利用しています。こうした人気サービスには攻撃者も集まりやすく、脆弱性が見つかれば一気に大規模攻撃につながります。また、ユーザーのアカウント乗っ取りを狙ったフィッシングやマルウェアのばらまきも頻繁に行われます。
2. 権限設定の不備やパスワードの使いまわしが多い
実際のところ、多くの企業や開発現場では「便利に使うために皆が管理者権限を持っている」「社内で同じパスワードを共有している」などの 基本的なミス が起こりがちです。
こうした設定ミスや不注意が、一気にセキュリティの弱点として表面化します。
3. オンライン化・リモートワークの流れで利用範囲が拡大
コロナ以降、リモートワークが普及し、ファイル共有サービスやチャットツール を使う頻度は格段に上がりました。オフィス外からも手軽にアクセスできるがゆえに、通信の安全性 や アクセス制御 が甘いと大きなリスクになります。
代表的な「業務用ツール」とよくあるリスク例

ここでは、社内外で幅広く使われる代表的なツールを取り上げ、それぞれによくあるリスクを紹介します。
1. コミュニケーションツール(Slack, Microsoft Teams, Zoomなど)
情報漏えいリスク
チャットにはソースコードや顧客情報、技術仕様など重要な情報が日常的にやりとりされます。もし アカウントが乗っ取られる と、一気に機密情報が抜き取られる可能性があります。
悪意あるファイルの受け取り
チャット内で共有されたファイルにマルウェアが仕込まれているケースも。むやみにダウンロードや実行をすると感染リスクがあります。
対策のポイント
多要素認証(MFA)の徹底
パスワードが盗まれても、MFAを有効にしていれば不正ログインされるリスクは格段に減少します。
ワークスペースごとの権限設計
不要なチャンネルや管理権限を付与しないこと。「必要な人が必要な情報にだけアクセスする」を徹底。
ファイル共有ポリシーの策定
実行形式ファイル(.exeなど)の送受信には注意喚起を行うなど、社内ルールを明確にしましょう。
2. クラウドストレージ(Google Drive, OneDrive, Dropboxなど)
アクセス権限の誤設定
個人用のドライブに機密資料を保存したつもりが、実は「組織全体が閲覧可能」になっていた…という事例が頻発。
共有リンクの誤転送
共有リンクを外部に送ってしまい、本来アクセス権のない人がファイルを取得できる状態になることも。
対策のポイント
権限レベルの見直し
「閲覧のみ」「コメントのみ」「編集可」など、権限を細かく制御。定期的に共有設定を監査する仕組みを導入。
リンク共有ポリシーの明確化
誰が共有リンクを発行していいのか、どの範囲まで許可するのかチームで決めておく。
組織管理ツールの活用
G SuiteやMicrosoft 365などの監査機能やログを使うことで、全体的な利用状況を可視化し、不正を早期発見できます。
3. タスク管理ツール・プロジェクト管理ツール(Jira, Trello, Asanaなど)
不適切なボード公開
誤って社外の人にもボードやタスクが見える状態にしてしまうケース。
機密情報の書きすぎ
テキストベースでやりとりが簡単なぶん、パスワードやAPIキーをコメントに書いてしまう例も。
対策のポイント
公開範囲のチェック
ボードを作成するときには、必ず「プライベート」か「組織内のみ」かを確認しておく。
セキュアな情報の取り扱いルール
ログイン情報やAPIキーなどは絶対に書かない。別途シークレット管理ツールを使う。
4. パスワード管理ツール(1Password, LastPassなど)
マスターパスワードの漏えい
マスターパスワードが盗まれると、ツール内の全てのアカウント情報が危険にさらされる。
ツールへの依存度が高すぎてメンテナンスを怠る
ツール自体の脆弱性放置は危険。
対策のポイント
強力なマスターパスワード & MFA
ツールが提供している多要素認証を必ず使い、マスターパスワードは他サービスと重複しないものに。
最新版へのアップデート
修正パッチやセキュリティアップデートはすぐ適用しましょう。
5. 拡張機能・プラグイン・カスタムスクリプト
不審な拡張機能をインストール
便利そうに見えて情報収集型マルウェアの可能性あり。
更新が止まったプラグインの放置
開発元が更新をやめたプラグインは脆弱性を抱えたまま。
対策のポイント
公式ストアからのみインストール
ブラウザ拡張機能はChromeウェブストアやMozilla公式など、信頼できる場所から導入を。
不要な拡張機能は削除
不要なものを残しておくほどリスクが増える。定期的に整理を。
セキュアな運用を実現するために

1. 社内ルールとガイドラインの整備
どのツールを使っても良いのか?
インストールには許可が必要なのか?
どこまでの情報を扱っていいのか?
こうした事項を口頭ベースではなく文書化し、周知しましょう。
2. アクセス管理と権限付与を定期的に監査
どのメンバーがどのツールにどの権限でアクセスできるかを定期的に点検。
退職者や部門異動があった場合、すぐにアカウントや権限の見直しを行いましょう。
3. アップデートと脆弱性情報のフォロー
どんな優秀なツールも、ゼロデイ脆弱性やバグが発見される可能性があります。
公式アナウンスやパッチリリースは見逃さない
セキュリティ関連の情報源を定期的にチェック
4. 社内教育と啓発
「セキュリティは専門家だけの仕事」と思わせないことが大切。
定期的に勉強会を開き、過去事例などを共有して、誰もがセキュリティを意識する文化を育てましょう。
今日から実践!
業務ツールセキュリティチェックリスト
項目 | チェック内容 |
多要素認証の利用 | - パスワードだけでなく、MFAを設定しているか? - 特にメール/チャット/ストレージなど機密度の高いツールで有効にしているか? |
権限設定の見直し | - ワークスペース/ボード/プロジェクト単位で最小限の権限になっているか? - 不要になったメンバーのアカウントを削除しているか? |
パスワード管理 | - パスワード管理ツールを活用し、強固なパスワードを使っているか? - 使いまわしはないか? |
ツールのアップデート | - 常に最新版を使っているか? - 怪しい通知や警告を放置していないか? |
ファイル共有の設定 | - クラウドストレージの共有範囲が適切か?(組織内のみ、特定ユーザーのみなど) - 外部共有リンクの有効期限を設定しているか? |
ダウンロード/インストール時の注意 | - 公式サイトや公式ストアからのみダウンロードしているか? - 不要になった拡張機能は削除しているか? |
情報の取り扱い方針 | - 機密情報をチャットやタスク管理ツール上に貼り付けていないか? - APIキーやパスワードはシークレット管理サービスを使っているか? |
よくある疑問(Q&A)
Q1. ツールを使うときに「管理者権限を要求します」と出てきたらどうすればいい?
A. むやみに許可しないのが大原則。業務に本当に必要かどうか、上司や管理者、公式ドキュメントを確認し、正当な理由がある場合のみ許可しましょう。
Q2. パソコンが古いOSのまま使われています。ツールを最新版にしても問題ない?
A. OS自体が古いと、ツールレベルのアップデートだけでは根本的な脆弱性を解消できません。可能な限りOSもアップデートしましょう。
Q3. クラウドストレージで社外コラボレーションしたい場合、何を気をつける?
A. プロジェクト単位 でアクセス範囲を限定した共有フォルダを用意し、組織外ユーザーに最小限の権限だけを付与します。共有リンクが“全員に公開”にならないよう注意しましょう。
Q4. パスワード管理ツールの導入をチームに提案したいが、コストやハードルが高い…
A. 無料もしくは低価格プランをまずは試験導入してみましょう。**「パスワード漏えいによる損失」と「ツール導入コスト」**を比較し、数値化して説明すると導入が進みやすくなります。
Q5. 拡張機能やプラグイン、社内ツールのカスタマイズを楽しみたい…
A. 便利な反面、開発元が不明瞭なものは要注意。オープンソースかつコミュニティが活発なもの や 大手ベンダーが管理している ものを選び、必ず社内ルールに沿って導入しましょう。
まとめ
「業務で使うツール」は、エンジニアの生産性を高めてくれる頼もしい相棒です。しかし、ツールが便利であればあるほど、セキュリティの穴を突かれると被害が大きくなる のも事実。
今回紹介したコミュニケーションツール、クラウドストレージ、タスク管理ツールなどは、どれも業務に欠かせない反面、それぞれ異なるセキュリティリスクを抱えています。
利用前に権限設定や公開範囲を確認する
多要素認証(MFA)でアカウント乗っ取りを防ぐ
共有リンクやファイルアップロードのルール化
不審な拡張機能やプラグインには手を出さない
ツールのバージョンを常に最新に保つ
こうした基本的な対策を徹底するだけでも、リスクは大きく下がります。さらに、定期的に 社内ルールの見直し や チェックリスト を活用すれば、運用上の抜け漏れを防止できるでしょう。
セキュリティ事故は、ほんの小さな操作ミス から発生し、大きな損失につながる場合もあります。エンジニアとしてはツール選定・利用の際に、「本当に安全に使えているか?」 を常に意識することが大切です。
ぜひ明日から、(もしくは今日から!)自分が使っているツールをセキュリティの視点で見直してみてください。小さな心がけが、大きなトラブルを未然に防ぐ一歩になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの業務ツールライフが、より安全かつ快適になりますように!